『たむら市政だより』2025年5月号 食品ロスを減らして環境にもお財布にもやさしい生活を
2025年5月1日
『たむら市政だより』5月号の連載記事「ちょこっとエコライフ~身近な省エネを実践しよう!~」Vol.21「食品ロスを減らして環境にもお財布にやさしい生活を!」に記載した食品ロスに関する算出根拠と、食品ロス削減について私たちができることについて紹介いたします。
食品ロスとは
食品ロスとは、料理を作りすぎるなどして食べ切れずに捨ててしまう「食べ残し」、割引によって必要以上に購入してしまい、食べずに捨ててしまう「直接廃棄」、野菜の皮を厚くむき過ぎによって、食べられるところまで切って捨ててしまう「過剰除去」といった、食べられるのに廃棄されてしまう食べ物のことです1)。食品ロスとは食べられるのに捨てられてしまう食べ物を指すのに対し、食べられない部分を含む場合は「食品廃棄物」といいます。バナナで食品ロスと食品廃棄物の違いを例えると、白い実の部分は「食品ロス」、黄色い皮を含むバナナ全体は「食品廃棄物」になります2)。また、食品を捨てると、その生産に使われたエネルギーや労働力、原材料となる動植物が無駄となります。
1)デコ活「感謝の心食べ残しゼロ」を参照。
2)小林富雄『食品ロスはなぜ減らないの?』(岩波書店、2022年)を参照。
日本の食品ロス量の推移
食品ロスは、食品関連事業者から発生する「事業系食品ロス」と一般家庭から発生する「家庭系食品ロス」の2つに分けられます。図表1を見ると、2022(亚洲通_亚洲通官网¥娱乐网址4)年度の食品ロス量は472万トン、このうち事業系食品ロス量は236万トン、家庭系食品ロス量も236万トンでした。2030年度までに2000年度比で半減(547万トン→273万トン)するという事業系食品ロス削減目標を2022年度に達成しました。とくに外食産業においてピークの133万トンから60万トンまで54.9%の削減を達成したのをはじめ、食品製造業、食品小売業で削減が進んでいます。一方、家庭系食品ロス削減目標も2030年度までに2000年度比で半減(433万トン→216万トン)するという目標を掲げています。こちらももうすぐ達成できそうですが、達成後もこの値を維持する必要があります。
食品ロス量472万トンを人口(125,416,877人)で割ると国民1人当たり37.6kgの食品ロスが発生していることになります。これを年間365日で割ると103gとなるので、たくさんの食品ロスが発生しているかをわかりやすく伝えるために、「国民全員が毎日おにぎり1個分を捨てていることになる」と表現されることがあります。

食品ロスによる経済損失
食品ロスの発生は、経済損失にもつながります。食品ロスによる経済損失は4兆円、国民1人当たりにすると約3万円の損失となります。この算出根拠については図表2に記載しています。
三菱UFJリサーチ&コンサルティングの試算によれば、食品ロス量472万トンについて、1トン当たり0.85(百万円/t)の経済損失が発生すると想定しており、2022年度の食品ロスに伴う経済損失額を約4兆円(図表2では4兆120億円)と見積もっています3)。また、国民1人当たりの経済損失額は、4兆120億円を人口(125,416,877人)で割って算出しています。なお、三菱UFJリサーチ&コンサルティングの試算によると、食品ロスによる国民1人当たりの経済損失額は32,125円とされていますが、私たちの試算では31,989円となっており、若干の差があります。国民1人当たり1日当たり経済損失額は、31,989円を365日で割って87.6円となりました。

*1 環境省「我が国の食品ロスの発生量の推移」
*2 三菱UFJリサーチ&コンサルティングは「亚洲通_亚洲通官网¥娱乐网址6年度 食品ロスによる 経済損失及び温室効果ガス排出量に関する調査業務調査報告書(概要版)」において食品ロス量あたりの経済損失[百万円/t]を0.85としている。
*3 2023年1月1日の住民基本台帳を基づく国内総人口で除して計算している。「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数調査_【統計】都道府県別人口、人口動態及び世帯数」
食品ロスによる温室効果ガス排出量
三菱UFJリサーチ&コンサルティングの試算によれば、食品ロス量に対し、温室効果ガス排出量(t-CO2/t)を2.22をかけることで、2022年度の食品ロスによる温室効果ガス排出量を1,046万t-CO2、国民1人当たりでは83kg-CO2/人となったとしています4)。私たちの試算では、図表3のとおり、2022年度の食品ロスによる温室効果ガス排出量は1,047万8,400(t-CO2)となりました。また、国民1人当たりの温室効果ガス排出量(kg-CO2/人)は、人口(125,416,877人)で除して、83.5(kg-CO2/人)と計算されます。つまり、食品ロス発生による温室効果ガス排出量は、2022年度の食品ロス発生量から算出すると、国民1人当たり83.5㎏-CO2を排出していることになります。
また、国連環境計画のFood Waste Index Report 2024には、全世界の温室効果ガス排出量のうち、8~10%が食品廃棄由来と推計されると記載されています5)。
4)三菱UFJリサーチ&コンサルティング「消費者庁請負事業:亚洲通_亚洲通官网¥娱乐网址6年度 食品ロスによる経済損失及び温室効果ガス排出量に関する調査業務調査報告書(概要版)」(亚洲通_亚洲通官网¥娱乐网址6年8月)
5)UNEP Food Waste Index Report 2024. Think Eat Save: Tracking Progress to Halve Global Food Waste.XIページを参照。

*1 環境省「我が国の食品ロスの発生量の推移」
*2 三菱UFJリサーチ&コンサルティングは「亚洲通_亚洲通官网¥娱乐网址6年度 食品ロスによる 経済損失及び温室効果ガス排出量に関する調査業務調査報告書(概要版)」において食品ロス量あたりの経済損失[百万円/t]を0.85としている。
*3 2023年1月1日の住民基本台帳を基づく国内総人口で除して計算している。「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数調査_【統計】都道府県別人口、人口動態及び世帯数」
食品ロス削減のためにすべきこと
食品ロスを削減するためには、私たち消費者、食品関連事業者、国?地方公共団体等の各々がそれぞれの立場で、この問題を「他人事」ではなく、「自分事」として捉え、行動に移すことが大切です。
具体的な行動例としては、図表4では、消費者、農林漁業者?食品関連事業者(以後、「生産者」と表記)、国?地方公共団体で分けています。生産者の立場では、規格外や未利用の農林水産物の有効活用や、賞味期限の延長、納品期限の緩和が挙げられます。
個人や家庭でできる食品ロス削減の方法
食品ロスは、日々のちょっとした心がけや工夫で大きく減らすことができます。家庭でできる取り組みを以下にまとめてみました。買物時に「買い過ぎない」、料理を作る際に「作り過ぎない」、外食時に「注文し過ぎない」、そして「食べきる」ことが大事です。残った食材や料理も無駄にせず、リメイクや保存、寄付などで有効活用し、それでも発生する食品廃棄物は燃えるゴミに出さない工夫が環境負荷を減らします。
- 買い物時の工夫
- 買い物前に出掛ける前に、家庭にある在庫を確認し、必要な分だけ購入する。
- 冷蔵庫にマグネットボードやホワイトボードを貼って、庫内に何が入っているか書いておいて、重複買いを防ぐ。
- 買い物はまとめ買いで大量に購入するのではなく、バラ売り、少量パック、量り売りを活用し、食べられる量だけ、必要な分だけ購入する。
- すぐに食べる予定の食品は、手前に陳列している商品を選んだり、割引シールの貼られた賞味期限の短い食品を購入することで、店舗での廃棄を減らすことができる。
- 賞味期限と消費期限の違いを理解し、賞味期限が切れたからと言って、すぐに食べられなくなるわけではないことを理解する6)。
- 食品の保存と管理
- 消費期限の長い食品は奥、短いものは手前に配置し、使い忘れを防ぐ。
- 食品に記載されている適した保存方法で保存する。
- 使い切れない食材は冷凍?塩漬け?酢漬けなどで保存する。
- 調理の工夫
- 体調や健康、家族の予定も考えて、食べきれる量だけ調理する。
- 作り過ぎて残った料理は、リメイクやアレンジレシピで無駄なく使ったり、残っている食材で何ができるか考えて調理する。
- 野菜の皮や茎なども、できるだけ食べられる部分は活用する。
- 食事時の工夫
- 食べられる分だけ盛り付け、食べ残しを減らす。
- 外食時は自分が食べきれる量だけ注文する。
- 宴会では乾杯後30分間、お開き10分前は、自分の席で料理を楽しむ「3010運動」を実践し、食べ残しを減らす。
- 使い切れない食品の活用や生ごみ処理方法の工夫
- 使い切れない食品や未開封の保存食は、フードバンクや地域の福祉施設などの団体に寄付するフードドライブを行う。
- 出てしまった生ごみはコンポストや生ごみ処理器を使って堆肥化したり、減量化させて燃えるごみを減らす。
[参考資料]
政府広報オンライン「食品ロスを減らそう!今日からできる家庭での取組」
環境省「食品ロスポータルサイト」
「食品ロスダイアリー」を使ってみよう。
最後に、「食品ロスダイアリー」についてご紹介します。食品ロスダイアリーは、家庭で発生する食品ロスの量を記録する日記帳のことで、食品ロス削減の意識を高めることができます。NPO法人「ごみじゃぱん食品ロス削減チーム」が提供しているサービスでは、Webアプリでブラウザーから簡単に、使わずに捨ててしまった食品や、食べ残しを捨ててしまった食材が発生した日に、何の食材をどのくらいの量を捨ててしまったかの記録ができます。また、環境省も、「7日でチャレンジ!食品ロスダイアリー」を作成しています。また、政府広報オンライン「食品ロスを減らそう!今日からできる家庭での取組」では、「食品ロス削減啓発冊子/計ってみよう!家庭での食品ロス」を使って、家庭でどのぐらいの食品ロスが発生しているか、把握してみることから始めてみることを提案しています。この機会にぜひ、こういったツールも利用してみることをお勧めします。
[参考資料]
環境省「環境再生?資源循環―食品ロスの削減?食品廃棄物等の発生抑制」「7日でチャレンジ!食品ロスダイアリー」
NPO法人ごみじゃぱん食品ロス削減チーム「食品ロスダイアリー:家庭で廃棄する未使用の食品や食べ残しを記録する日記」
政府広報オンライン「食品ロスを減らそう!今日からできる家庭での取組」
国際環境経済学科2年 塩田